Skip to Main Content
ニュース&イベント: 雇用/労働法/福利厚生関連情報

カリフォルニア州におけるインディペンデント・コントラクターの再定義

11.30.18
Author: Asa Markel
Co-Author: Miho Lee (Law Clerk)

[概要]

カリフォルニア州では、今年の4月と10月の2度にわたり、インディペンデント・コントラクター(独立請負人)として雇用された雇用者を、事実上「従業員」とみなすとの判決が下された。4月のカリフォルニア州最高裁判所の判決(Dynamex Operations West, Inc. v. Superior Court (2018)) は、カリフォルニア州の賃金規定第9号(Wage Order No.9)を検討した後、さらに他州でも導入されている「ABCテスト」を適用した。賃金規定第9号は「運送業に携わる労働者」のための労働条件を規定するもので、同号の対象となる「従業員」を定義するものでもあるため、当該訴訟の原告(雇用者)が同号の下で対象従業員とみなされるのか否かが、まず第一の焦点となった。一方のABCテストは、雇用者が事実上インディペンデント・コントラクターか否かを見極めるときに適用されるもので、雇用主が次の3つの各条件を証明できない場合、雇用者はインディペンデント・コントラクターではなく「従業員」とみなされ、最低賃金レベルや残業代等、賃金規定に基づく請求において、雇用主に賠償責任が生じる可能性がある。

  1. 雇用者は、その業務の遂行に関して、雇用主から指図・指示を受けていないこと。
  2. 雇用者は、雇用主の下での通常業務以外に、別の業務に従事していること。
  3. 雇用者は、雇用主の下で遂行する業務と同様の性質の業務を提供する別途独立した事業に日常的に従事していること。

今年10月のカリフォルニア州控訴裁判所の判決(Garcia v. Border Transportation Group, LLC, No. D072521)の中で、裁判所は、会社に対して賃金規定法違反で訴えを起こしたタクシー運転手(「当該運転手」)はABCテストの条件Cを完全に満たしていなかったと判断し、会社側が、トライアル(正式事実審理)を回避するために自身に有利な判決で結審を求める申立てを行った際、それを退けた。当該運転手は、当初個人所有の自動車を使用していたが、会社の規定で車の色は白でなければならず、車体に「Calexico Taxi」というマークを付けることを義務付けられた。また、当該運転手は、ビジネスライセンスのリース料として毎週$520のほか、無線サービス使用料として毎月$350を会社に支払っていた。さらに、個人所有の車が故障したために会社の車をリースした際、1シフト(12時間)の使用で$65を請求された。ある日、車の返却に1時間遅れたところ、$65の延滞料を追加請求されたあげく、車のリースの更新を拒否されたため、当該運転手は会社を辞めざるを得なくなった。控訴裁判所は、当該運転手が自身の個人ビジネスを宣伝したり、会社と無関係の顧客リストを持っていたり、または自らのビジネス・ライセンスを別途保持していたりしたことはなく、つまりは自営業を営んでいた事実がないこと等を理由に、ABCテストの条件Cを満たしていないとの判決を下した。事実、当該運転手は、自らのタクシー事業の宣伝をするどころか、「Calexico Taxi」のマークを車体に付けることを義務付けられていたため、雇用主のビジネスを宣伝することを余儀なくされていた。また、車とビジネスライセンスは会社を通じて使用権をリースしていたため、会社を辞めた時点でタクシー事業を継続することは不可能となった。こうして、「当該運転手はインディペンデント・コントラクターではなく従業員である」との判決が下された結果、同運転手が提起した請求における8つの訴因のうち、次の5つが裁判所により支持された。(1)賃金未払い(2)最低賃金の未払い(3)休憩時間付与の不履行(4)給与明細書提供の不履行(5)不正競争。

今後の対策:今回のGarcia訴訟における判決は比較的新しいものであるため、カリフォルニア州最高裁判所での控訴審が求められる可能性がある一方で、ABCテストが今後の雇用訴訟に導入されることは避けられないと思われる。各企業においては、インディペンデント・コントラクターを採用する際、しっかりとした契約書を作成したり、インディペンデント・コントラクターとされるための条件が明記された社内ガイドラインを設置したりする等、ABCテストを確実に満たすようにすることが重要ポイントとなる。

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。