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ニュース&イベント: 雇用/労働法/福利厚生関連情報

カリフォルニア州公正雇用住宅法における新たな改正

5.21.19
著者: エイサ・マーケル
共著者: 美保 リー (ロー・クラーク)

概要

カリフォルニア州の公正雇用住宅法(Fair Employment and Housing Act)(以下,「FEHA」)は、職場での差別を禁じ、カリフォルニア州の雇用主(企業)とその従業員を対象に差別を防止するためのガイドラインを規定している。この度、差別やハラスメントといった違法な雇用慣行を再定義する州法改正案SB 1300(以下、「SB 1300」)が、2019年1月1日付けで発効した。カリフォルニア州の雇用主は、今回の改正を経た新法が職場におけるハラスメントの被害者をこれまで以上に手厚く保護するものであることを認識しておく必要がある。

SB 1300 は、FEHAの雇用規則にいくつかの変更と新規事項を追加した。まず第一に、雇用主は、FEHA に基づく正式な請求の解決を目的として協議された和解契約を除き、昇給、賞与、雇用条件もしくは雇用の継続と引き換えに、従業員に対して(1)FEHAの下での請求や権利に関わる放棄書への署名を要求したり、または(2)非難禁止条項(nondisparagement agreement)あるいは職場における違法行為や違法とみなされる可能性のある行為を従業員が開示できる権利を否定することを趣旨とするその他文書への署名を要求したりすることは禁止されることとなった。その結果、雇用主は、FEHAに基づく請求や民事訴訟の提起を従業員に思い留まらせる内容を含む雇用契約を執行することができなくなった一方で、従業員においては、セクハラを含む職場での違法行為を開示しないことに同意する必要はなくなった。

次に、民事訴訟において、職場におけるセクハラ被害者により高いレベルの保護を提供する規定が含まれることとなった。中でも下記に列挙する新たな法的基準は特筆すべき点と言える。(1)原告(セクハラ被害者)が、仕事の生産性の低下がハラスメントに起因するものであることを証明するには、「通常人(reasonable person)が当該差別的行為を受けたならば、当該ハラスメントにより当人の労働環境が変わり、職務遂行が困難になったであろう」旨を示すだけで足りること。(2)ハラスメントに相当する行為は、たとえ一度きりの行為であったとしても、かかる行為が原告の職務遂行を不当に妨害したり、または威嚇的、敵対的もしくは攻撃的な職場環境を作り出したりしたのであれば、敵対的職場環境の存在に基づく訴訟を提起するに十分とされること。(3)裁判所が、敵対的職場環境の存在を見極めるにあたり、社内で決定権を持たない者や原告の同僚による差別的発言も関連状況証拠として検討することが可能になったこと。(4)セクハラと認定するための法的基準は、職場のタイプ(種類)にかかわらず一貫してあるべきとされたこと。(5)ハラスメントの訴訟は、サマリー・ジャッジメント(重大な事実に争いがない場合、正式事実審理(トライアル)を経ることなく、裁判官が事実に基づき事件への判決を下すこと)にて単純に処理されるべきものではないとされたこと。

さらに、被告である雇用主が勝訴したとしても、裁判所により原告の請求は事実無根、不合理もしくは根拠のないものであると判断されたり、またはそのような状況にもかかわらず原告が訴訟を継続することを望んだりしない限り、雇用主が原告から弁護士費用を回収することは認められなくなった点も注意に値する。これまでのFEHA関連訴訟では、勝訴した側が他方当事者からの費用回収を認められることもあったが、今回の改正により、今後は訴訟の早い段階で和解を試みる被告が増える傾向に向かうであろう。

この他に、新法が従業員個人の法的責任を増大させるものとなっている点も併せて指摘したい。改正前のFEHAの下では、訴訟を提起したり、証言したり、あるいは原告の手助けをしたりしたことを理由に、雇用主が従業員を解雇、免職または差別することは禁止されていた。一方で、FEHAの下で違法とされるハラスメント行為を行った従業員に対しては、雇用主が当該従業員による行為を認識していたか、もしくは認識すべきであったかを問わず、「個人的責任」を問われるとされていた。この点に関して新法は、FEHAが違法とする行為に実際に関与した従業員は、雇用主が同行為に関して適切な是正措置を講じることを怠った場合であっても、例外なく個人的責任が問われると示しており、個人的責任をさらに強調するものとなっている。

最後に、新法は、職場でハラスメントに居合わせたり、それを目撃したりした従業員が、当該行為がハラスメントか否かをその場で判断し、必要に応じて適切に介入することができるようにするための従業員向けのトレーニングの提供を雇用主に認めている。これは、介入が適切で且つ必要な場合に、居合わせた人による可能な範囲でのハラスメント阻止を促すことを目的としている。ちなみに、このようなトレーニングの提供に言及する条項は単なる勧告(recommendation)にとどまっているが、職場でのハラスメント防止はあくまでも「雇用主の責任である」とする制定者の確固たる見解が伺えるのではないだろうか。

新たな反ハラスメント法令は、現在の社会趨勢を反映するものであると言える。従って、全ての企業および個人ともにその重要性を心すべきである。特に、ハラスメント防止トレーニングの実施は極めて重要で、雇用主は事業規模や従業員のポジション(役職)に関係なく、全ての従業員に対してトレーニングへの参加を必須とすべきである。各企業の人事担当者は、新法を十分に理解し、会社のさらなる「ハラスメント防止強化」に取り組んで頂きたいと思う。

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