Skip to Main Content
ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

【新型コロナワクチン】企業による従業員への接種義務づけは、一部例外を除き「可能」

12.23.20

概要
 

2020年12月16日、雇用機会均等委員会は、誰もが抱いていた疑問に答え、「会社は、従業員に新型コロナワクチンの接種を義務づけることができる」としました。しかし重要な例外事項を考慮する必要があるため、雇用主は、従業員の権利と義務の制限について把握しておく必要があります。

雇用主は、従業員に新型コロナワクチンの接種を義務づけることができますが、いくつかの例外事項を遵守しなければなりません。雇用機会均等委員会(「EEOC」)は、2020年12月16日に技術的支援(Technical Assistance) Q&Aを発行しました。EEOCは、障害をもつアメリカ人法(「ADA」)や他の差別禁止法の規定を執行する連邦機関であるため、このガイダンスは、雇用主と従業員の権利行使および義務履行について理解する重要な役割を果たしています。当事務所では通常、雇用主に対し、従業員に薬局、医療機関または医療提供者の下でワクチンの接種を受けたことを証明するように義務づけること、ただし、何らかの障害や熱心な宗教的信条を理由に接種しない選択を例外として認めること、そして、従業員による接種の拒否を理由に解雇を検討する際には、会社に不当な困難が生じない範囲の合理的便宜を当該従業員に提供できるか否かを判断することをアドバイスしています。

雇用主は、薬局や医療提供者の下で新型コロナワクチンの接種を受けるよう従業員に義務づけることはできるものの、薬局や医療提供者と従業員の雇用主である会社との間に契約が存在すべきではありません。また、雇用主は、従業員にワクチンを接種したことを証明するように義務づけることはできますが、その際に従業員自身の医療情報について尋ねるべきではありません。医療情報を求めれば、ADAに抵触することになります。従業員がワクチンの接種を証明できない場合、雇用主は、従業員が接種を受けなかった理由などの補足質問をすることができます。ただし、そのような質問は業務に関連し、業務上の必要性に基づいたものでなければなりません。

そのため、雇用主は補足質問をしたいとは思わないかもしれませんし、あるいはその必要性を感じないこともあるでしょう。代わりに雇用主は、当該従業員に職場復帰を許可しなかったり、または解雇したりすることができます。しかし、雇用主が自動的にこのような措置を執ることはできません。従業員からワクチンの接種を受けなかった旨を伝えられた場合、雇用主は、同従業員や他の人々の健康または安全に重大な危害が及ぼされるリスクがあることを証明しなければなりません。

これは、直接的脅威分析(direct threat analysis)と呼ばれるものです。雇用主は、直接的脅威があることを示すために、各従業員が置かれた状況を個別に分析し、リスクの存在期間、潜在的な危害の性質と重大性、潜在的な危害が生じる可能性および潜在的な危害の緊急性について判断しなければなりません。さらに、会社にとって不当な困難を生じない範囲の合理的便宜を従業員に提供できるか否かについても判断しなければなりません。たとえば、対象となる従業員にリモートワークや休職を認めることは、他の従業員に対する直接的な危害の脅威を軽減するための合理的便宜です。このような分析をする際には、雇用主と従業員が対話をする必要があります。従業員が直接的脅威であり、合理的便宜についての対応策も存在しないと会社が判断した場合に限って、雇用主は従業員に出社を禁じ、解雇することができます。

従業員によるワクチン接種の拒否について、ADAの観点から分析する以外に、従業員は宗教的慣行や信条に熱心に従うためにワクチン接種を拒否することができます。従業員がそのような拒否をした場合、雇用主は自動的に従業員を解雇することはできません。その代わりに、会社は、自社にとって不当な困難を生じさせない範囲の合理的便宜を従業員に提供しなければなりません。会社にとって不当な困難とは、ささいな費用や負担以上のものを意味します。従業員の宗教的信条について疑うに足る客観的な根拠がある場合、雇用主は、従業員に本人の宗教的慣行を証明するように要求することができます。

 

以上のことから、各雇用主においては、予防(ワクチン)接種に関する会社の方針・規則を文書化しておくことをお勧めします。本規則では、予防接種が強制的なものか、または任意のものかを明記する必要があります。強制的なものである場合は、予防接種を受けたことの証明を要求することができます。さらに、本規則には、ADAおよび市民的権利法(人権法)第7編(タイトル・セブン)(Title VII of the Civil Rights Act)に基づき、会社が従業員の宗教的な信条・慣行・順守に対する権利を保護することも明記する必要があります。最後に、規則に従わない従業員を雇用し続けることが、本人や職場の他の従業員らに直接的な脅威となるとともに、会社にとって不当な困難とならない範囲で合理的な便宜を同従業員に提供できない場合は、解雇もあり得ることも明記しなければなりません。

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。