概要
海外に製品を出荷している企業は、この1年間に輸送費の暴騰を目の当たりにしてきました。海運業界の専門家は、このように荷主のコストを引き上げる要因は、空コンテナの不足や他のプラクティカルな問題であると指摘してきました。しかし、バイデン大統領は、2021年7月9日に行政命令に署名し、連邦海事委員会(Federal Maritime Commission)(以下「FMC」といいます。)に海運業界における競争環境について再調査を行うことを指示しました。同命令においてバイデン大統領は、近年、海運産業において、消費者の海運コストを上昇させていると思われる市場集中が見られると指摘します。これに加え、大統領は、コンテナのデマレージ(超過保管料)およびディテンション(返却延滞料)の慣行に関するFMCによる「徹底した」監督を呼びかけました。
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荷主が使用しているコンテナが合意された期間内にターミナルから撤去されないか、あるいはコンテナの貸主に返却されない場合には、デマレージとディテンションが荷主に請求されます。物流が滞ると荷主は、法外な金額のデマレージとディテンションを請求される場合がありますが、輸送の遅延は陸運業社、海運業者またはマリンターミナルの管理下にある間に起こるため、物流の滞りは荷主のコントロールの範囲外であることがあります。
バイデン大統領の行政命令が出された直後に、FMCは2021年7月から、9社の海運大手が行っているデマレージおよびディテンションの慣行の監査プログラムを開始すると発表しました。この1年間に、FMCは、正式な不服申立てがないにも拘わらず、すでにデマレージおよびディテンションに関する不当な慣行の調査を開始していました。従来は、積荷に利害関係を有する者が、責任を有する運送キャリア、ターミナルまたは運送取扱事業者に対し、不当なデマレージおよびディテンションによって被った損害賠償請求をFMCに申し立ててきました。FMCは、2016年に荷主の利益団体がルールの明確化を求めて行った申立てを行って以降、最近では2020年5月に、かかる状況におけるデマレージおよびディテンションの慣行の合理性の判断に関する規則を更新し、明確にしました。
米国政府および荷主は、FMCが講じてきたこれらの措置と前述の大統領令により要求された海運業界の競争性の調査とあいまって、荷主に請求される法外な輸送費が削減されることを期待しています。しかし、世界各国において様々な輸送手段(海路、空路、鉄道貨物、トラック、内陸水路)により行われている輸送業務の複雑性に鑑みると、これらの強硬な措置をもってしても、実際に荷主が救済を得られるまでにはある程度の時間を要する可能性があります。
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