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【雇用法フラッシュニュース 】 イリノイ州日雇い・派遣労働サービス法の改定により労働者の保護を強化

10.11.23

2023年8月4日、J. B. プリツカー州知事は、日雇い・派遣労働サービス法(Day and Temporary Labor Services Act) の重大な改正に署名し、同法は即時に発効されました。同月7日、イリノイ労働局 (Illinois Department of Labor) は、施行のための緊急規則を提出するとともに、恒久的規則を提案しました。

本改正は、人材派遣会社のクライアントである派遣先事業者に90日以上にわたって配属される労働者について、少なくとも、派遣先事業者に直接雇用される従業員の中で、勤続年数 (Seniority) のレベルと業務内容が同一または最も近く、最も給与が低い者と同一の給与と手当(または時給相当額)が支払われなければならないと定めています。派遣先事業者に比較対象となるべき直接雇用の従業員がいない場合、人材派遣会社は、労働者に対して、同派遣先事業者に直接雇用される従業員の中で、勤続年数 (Seniority) のレベルが最も近く、最も給与が低い者と同じ賃金率の給与および手当相当額を支払わなければなりません。本改正にかかるイリノイ労働局の緊急規則は、「手当 (benefits)」を、「医療、眼科、歯科、生命保険、退職金、休暇(有給と無給を含む)、その他同様の従業員手当、および、州法並びに連邦法によって義務付けられているその他の従業員手当」を意味すると定義しています。

特筆すべきは、同規則が、派遣労働者による派遣先事業者への就労が断続する可能性について述べていることです。同規則は、2023年8月4日以降、日雇い・派遣労働者が、連続であるか断続的であるかにかかわらず、12か月の間に90日(暦日)以上、派遣先事業者に配属された場合、当該労働者には、同じ給与および手当が支払われなければならない、ということを明確にしています。また、同規則は、日雇い・派遣労働サービス法が発効された時点ですでに派遣先事業者において90日以上就労している派遣労働者については、給与および手当が自動的に増額されるものではないということも明らかにしています。

また、本改正は、派遣労働者が派遣先の勤務場所で遭遇する可能性のある、当該業界において認識されている危険要素について、派遣労働者に対する一般的な安全研修を実施することを人材派遣会社に義務付けています。これを受けて、同規則は、安全研修は、毎年、派遣労働者が派遣先で業務を開始する日またはそれ以前に実施されなければならない、ということを明らかにしています。さらに、安全研修は、派遣先事業者または人材派遣会社にとって既知のあらゆる業務上の危険要素を含むものでなければならず、かつ、勤務場所に存在する、以下に挙げるすべての危険要素を含むものでなければならない(以下の危険要素を含んでいれば十分だということではありません。)、と本規則に明記されています。

  1. 個人用保護具の使用を必要とする危険
  2. 落下のおそれ
  3. 感電死のおそれ
  4. 物に衝突するおそれ
  5. 危険に巻き込まれるおそれ
  6. 機械関連の危険
  7. 化学物質またはその他の物質関連の危険
  8. 反復動作による危険
  9. 緊急時の行動計画

また、安全研修には、危険の除去、制御、さもなくば軽減、または労働者を危険から保護するために派遣先事業者が講じた措置や、危険を回避または制御するために労働者が取るべき手順に関する情報も含まれていなければなりません。この情報には、緊急避難およびシェルター・イン・プレイス(屋内退避)の手順も含まれます。

さらに、ストライキ、ロックアウトその他の労働問題が発生した場合、人材派遣会社は、当該労働問題と配属を拒否する権利(拒否した場合でも、将来の配属について当該労働者を不利に扱うことはできません。)について、労働者が理解できる言語によって、通知する書面(電子書面も可)を労働者に対して提供することなく、労働者を当該勤務場所へ派遣することはできない、と本改正は定めています。

加えて、本改正は、利害関係者が、人材派遣会社または雇用主、あるいはその双方に対して、訴訟を提起し、罰金の最大10%を徴収し、かつ、弁護士費用を回収することができる新たな強制執行の手続きについても規定しています。「利害関係者 (interested party)」とは、「公共または労働者の安全に関する法律、賃金および労働時間の要件、またはその他の法定要件の遵守を監視し、もしくはそれに注意を払う組織」と定義されています。しかしながら、利害関係者は、訴訟を提起する前に、まず、イリノイ労働局に苦情の申立てを行い、イリノイ労働局が、問題の解決を試みるために、人材派遣会社・雇用主に対して違反の疑いについて通知する機会を与えなければなりません。ただし、180日が経過しても、イリノイ労働局が問題を解決しないか、自ら訴訟を提起しない場合には、イリノイ労働局は、当該利害関係者に対して提訴の権利を認める通知 (right to sue letter) を交付しなければなりません。

ところで、イリノイ州日雇い・派遣労働サービス法は、もっぱら事務的または専門的な性質の業務を行う労働者を派遣する事業者には適用されないことに注意が必要です。同法の最近の改正も、専門的または事務的な業務には適用されません。同法の「日雇い・派遣労働 (day and temporary labor) 」の定義に変更はなく、日雇い・派遣労働者が派遣先で行う業務のことを指しますが、しかし、専門的または事務的性質の業務は、ここから明示的に排除されています。

本件に関して何かご質問がある場合、または今回の改正についてアドバイスをご希望の方は、ケヴィン・ボアザン弁護士 (Kevin S. Borozan)、または雇用/労働法/福利厚生部門のメンバーまでお問い合わせください。

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