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輸出管理法を遵守するために: 非移民ビザ請願書(フォームI-129)で雇用主が証明すべきこと

2.24.11
関連業務分野 移民法

輸出管理法(Export Control Laws)は、海外にどのような商品や技術を輸出できるか、また米国に滞在する外国人にどのような技術データを送信できるかなどについて定める連邦規則である。輸出管理法が制定されたのはしばらく前のことだが、近年、連邦政府は、外国人に規制対象技術を開示する際に証明義務を課すなど様々な方法で、米国法人に対して輸出管理法のコンプライアンスを強化しようとしている。

米国に滞在する外国人に規制対象技術および技術データを開示する際の証明義務

米国市民権移民サービス(USCIS)(以下、「移民局」という)は、H-1B、L-1およびO-1ビザの請願申請をする雇用主に対し、今回初めて、次を証明事項として義務づける。

  1. 輸出管理規則(Export Administration Regulation、以下、「EAR」という)および国際武器取引規則(International Traffic in Arms Regulations、以下、「ITAR」という)を検討したこと;および
  2. ビザ取得を支援する外国人(従業員)に規制対象技術および技術データを開示するために、輸出管理ライセンスを取得する必要があるか否かを決定したこと。

雇用主が、上記外国人に規制対象技術および技術データを開示する前に、輸出管理ライセンスを取得する必要がある場合、事前に輸出管理ライセンスを取得することなく、外国人に規制対象技術を提供しないことを宣誓証明しなければならない。2011年2月20日以降、非移民労働者(従業員)のためのH-1B、L-1およびO-1ビザの請願申請をする雇用主は、その申請書フォームI-129(以下「フォームI-129」という)に署名する前に、適用規則を遵守していることを必ず確認しなければならない。

規制対象技術または技術データの開示に関する米国輸出管理規則

輸出管理規則(EAR)および国際武器取引規則(ITAR)は、企業または個人が、規制対象技術または技術データを米国に滞在中の外国人に開示する場合、米国政府から事前の認可を得ることを義務づけている。EARおよびITARによれば、米国も含め、世界各地に所在する外国人に、規制対象技術または技術データを開示することは、たとえ開示者がその雇用主であっても、その国または外国人の国籍のある国への輸出とみなされる。これらの規則が示唆しているのは、米国企業が、雇用した外国籍の従業員に規制対象技術や技術データを開示する場合は、事前に米国政府からライセンスを取得しなければならない可能性があり、その外国籍の従業員には、今回移民局が新たに定めた証明義務の対象となるH-1B、L-1、またはO-1ビザ取得者、非移民労働者も含まれるという点である。

米国輸出管理規則を遵守していることを証明する義務

移民局は、各雇用主に対し、EARとITARを検討したこと、および規制対象技術または技術データをビザ取得者に開示するために米国政府の輸出ライセンスが必要か否かを決定したことを証明する義務を課している。EARとITARに関する情報は、それぞれhttp://www.gpo.gov/bis/ear/ear_data.htmlおよびhttp://www.pmddtc.state.gov/regulations_laws/itar_official.htmlに掲載されている。雇用主が輸出ライセンスを取得しなければならない場合、雇用主(企業またはその他事業体)は、米国政府から必要な認可を取得するまでは、そのような技術や技術データを当該従業員に開示・提供しないことを証明しなければならない。この雇用主の証明義務については、移民局のフォームI-129で次のように記載されている。             

請願者(雇用主)がビザ取得者に開示・提供する当該技術または技術データに関して、請願者は、輸出管理規則(EAR)および国際武器取引規則(ITAR)を検討し、次のように決定したことを証明する。

  1. かかる技術または技術データを当該外国人に開示するために、米国商務省もしくは米国国務省からライセンスを取得する必要はない、または、
  1. かかる技術または技術データを当該ビザ取得者に開示するに当たり、米国商務省および/もしくは米国国務省からライセンスを取得する必要があるため、当該請願者は、かかる技術または技術データをビザ取得者の開示に必要なライセンスまたはその他の認可を取得するまでは、当該ビザ取得者にかかる情報やデータを提供しない。

請願者は、フォームI-129、5ページ、パート6に記載される上記のどちらかを選択しなければならない。フォームI-129を提出する雇用主は、適切な証明ができるように、EARおよびITARを検討する際には合理的努力をすべきである。雇用主は、フォームI-129に署名するが、それは虚偽の記述をすれば偽証罪の刑罰が適用されることを理解した上でフォーム上提供する情報が真実偽りないことを証明するという意味である。したがって、フォームの記載内容に誤りがあれば虚偽とみなされる可能性があり、その場合は連邦法違反とみなされる。また、請願の承認後に虚偽が判明したとしても、最悪の場合は、請願が却下または取消される可能性がある。

規制対象技術または技術データ

外国人に対する輸出や開示の規制対象となる技術は多くはないため、上述したライセンスの取得義務により影響を受ける請願者は、ごく少数しかいないだろう。また、特定の技術が規制対象であったとしても、ライセンスを必要としない国もあり、ライセンスの申請を必要としない場合もある。外国企業を親会社とする米国企業、または外国に子会社または関連会社を有する米国企業は、技術または技術データの出所が海外にある親会社、子会社、または関連会社である場合でも、その技術や技術データが一度でも米国内に入れば、輸出管理規則(EAR)または国際武器取引規則(ITAR)の規制対象となることに注意すべきである。

外国人に対する開示の規制対象となる技術や技術データは、EARの通商管理リスト(Commerce Control List、以下「通商管理リスト」という)およびITARの米国軍需品リスト(U.S.Munitions List、以下「軍需品リスト」という)に挙げられている。詳細は、http://www.access.gpo.gov/bis/ear/ear_data.html#cclまたはhttp://www.pmddtc.state.gov/regulations_laws/itar.htmlを参照。通商管理リストに挙げられたEAR規制対象技術は、一般に軍事・民間の両方に利用可能なものとして知られる物品の製造、開発または使用に必要な関連情報であり、軍需品リストに挙げられたITAR規制対象技術データは、防衛物資に直接関連する情報である。

米国商務省の産業安全保障局(Bureau of Industry and Security、以下「産業安全保障局」という)は、通商管理リストを管理し、EARに基づき規制対象技術を外国人に開示するためのライセンスを発行している。米国国務省国防機器取引管理部(Directorate of Defense Trade Controls、以下「国防機器取引管理部」という)は、軍需品リストを管理し、ITARに基づき規制対象技術を外国人に開示するためのライセンスを発行している。EARについての情報および産業安全保障局でのライセンス申請方法は、www.bis.doc.gov に掲載されている。また、規制対象技術の開示に関するEAR規定についての詳細は、www.bis.doc.gov/deemedexportsに掲載されている。軍需品リストで定義されている防衛物資・軍需サービスの、またはそれらに関連する技術データを保有している製造会社、輸出業者および仲介業者は、国防機器取引管理部でライセンスを申請する前に国防機器取引管理部に登録しなければならない。ITARについての情報および国防機器取引管理部でのライセンス申請方法は、www.pmdtc.govに掲載されている。また、規制対象技術データの開示に関するITAR規定についての詳細は、http://www.pmddtc.state.gov/faqs/license_foreignpersons.htmlに掲載されている。

会社の技術が上記政府機関のどちらの管轄によるものかわからない場合、国防機器取引管理部に商品管轄権(Commodity Jurisdiction)の確認要求を提出すると、国防機器取引管理部は、貴社の技術の輸出ライセンスを管轄するのが産業安全保障局または国防機器取引管理部のどちらであるかを確認してくれる。また、産業安全保障局は、会社の技術や技術データが、通商管理リストに列挙されている品目のどれに該当するか判断し、規制対象であるか否かを判断するためのサポートを行っている。

雇用主へのアドバイス

米国輸出管理規則は、複雑で理解しにくいために、同規則を検討し、解釈するには多大な時間を要する。雇用主は、弁護士またはこれらの規則に詳しく、経験のあるコンサルタントからアドバイスを得ることをお勧めする。

会社で適切な輸出管理のコンプライアンス・プログラムを設けていない雇用主は、所有する規制技術や技術データの確認、維持および保護について明文化した規則書を作成しておくべきである。さらに、雇用主は、将来、移民局に非移民ビザの請願書を提出する際、効率よくかつ正確に証明義務を履行できるように、輸出管理全般のコンプライアンス・ポリシーも作成しておいたほうがよい。

増田・舟井法律事務所の弁護士は、本件分野における経験も豊富です。連邦輸出管理規則を遵守するために社内プログラムの作成を検討なさる場合は、ご相談ください。

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