貴社が、「移民法は従業員の米国ビザをサポートしている企業または多国籍企業のみに関係する法律である」と考えているとすれば、それは危険な思い込みです。移民法は、企業規模や業界にかかわらず、米国に所在するすべての企業に影響を与える可能性があります。まず、米国に所在する各企業においては、移民法の下、雇用する全ての従業員(米国市民も含む)が米国で就労資格を有していることを確認するよう義務付けられています。このような確認は、フォームI-9と呼ばれる就労資格確認書を通して行わなくてはなりません。フォームI-9を使用していない場合や、当該フォームが適切に記入・保管されていない場合には、違反の度合いに応じて、フォーム1件につき$230から$1,948の罰金が科せられます。
また、各企業においては、上記のような就労資格確認義務に加え、移民法上の差別禁止条項にも注意する必要があります。当該条項は、企業がフォームI-9手続きを進める中で従業員から提示された有効な証拠書類を拒絶したり、米国市民権の有無または在留資格(移民法上のステータス)を理由に現地労働者の採用を不当に拒否したりすることを禁止しています。こうした違反の一例は次の通りです。
- フォームI-9手続きの過程で永住権保持者に対してグリーンカードの提示を要求すること(*身元および就労資格の証明として永住権保持者が提示することができる証拠書類には、グリーンカード以外にも複数あります。雇用主が特定の書類の提示を要求することは違法とされています。)
- フォームI-9を再検証する過程でグリーンカードの再確認(すなわち、新たに発行されたグリーンカードの提示を要求)すること(*グリーンカードは、一旦フォームI-9手続きを行った後で失効したとしても、新たな証拠書類の提示は要求されないことになっている書類の一つです。)
- 人材採用活動の過程で「米国市民のみ(採用する)」旨の文言を使用すること
- 人材採用活動の過程で、候補者が現時点で有効な就労資格を保持しているにもかかわらず、将来米国ビザのサポートが必要になるかもしれないとして不採用とすること
- ソーシャル・セキュリティ・ナンバーの不一致が判明した際に、適切な調査を行わずに従業員を解雇すること
移民法コンプライアンスは、コンプライアンスの中でも特に徹底が難しい分野と言えます。貴社が従業員の米国ビザ・サポートを行っているか否かにかかわらず、移民法コンプライアンスが義務付けられていることを理解した上で、具体的な法的義務について移民法専門弁護士と一度確認されることをお勧めします。
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