Skip to Main Content
ニュース&イベント: 雇用/労働法/福利厚生関連情報

イリノイ州、競業避止・勧誘禁止合意に関する法律を改正し、雇用主中心に新たな規制を課す見込み

7.21.21
執筆者: ノーリーン アムジャット
共著 中山 怜香(サマー・アソシエイト) 

概要

イリノイ州議会は、近時、イリノイ州働く自由法(Illinois Freedom to Work Act)(以下、「IFWA」といいます。)の改正法案を可決しました。本改正により、イリノイ州の雇用主が従業員との間で競業避止および勧誘禁止の合意をすることが大きく制限されることになります。イリノイ州は、これらの合意の重要性を認識しているように見受けられる一方で、高所得層の従業員による不正競争の禁圧と取引の自由のバランスを取ろうとしています。本改正案は、近い将来、J.B. プリツカー知事によって署名される予定です。本改正は、2022年1月1日に発効し、それ以降に雇用主と従業員との間で締結された競業避止合意および勧誘禁止合意に適用されます。プリツカー知事が本法案に対して修正拒否権を行使した場合には、追ってアップデートを掲載いたします。

IFWA は、現在、雇用主に対し、従業員の競業避止または勧誘禁止に関する合意のエンフォースメントを行う場合には、かかるエンフォースメントを行うに至った正当なビジネス上の利益を証明することを要求しています。具体的には、IFWAは、現在、雇用主に対して、時給13ドルまたは連邦、州もしくは地方自治体で適用される時給のいずれか高い方の給与の支給を受ける低賃金従業員と競業避止合意を結ぶことを禁止しています。競業避止合意は、典型的には、従業員に対して特定の期間にわたり、特定の地域において、現在の雇用先で行っている職務に類似した業務を別の雇用主のために行うことを禁止するものです。現行のIFWAは、雇用主が、従業員に対して同雇用主の従業員、クライアント、顧客、ベンダー、サプライヤーまたは同雇用主と永続的な関係にある見込み客を勧誘することを一般的に禁止する勧誘禁止合意については規制を行っていません。

改正IFWAの施行により、イリノイ州の雇用主にとって競業避止合意および勧誘禁止合意にまつわる状況が大きく変化することになります。イリノイ州の雇用主は、年収額が75,000ドル未満の従業員と競業避止合意を結ぶことを禁じられ、この年収額は、2037年まで5年ごとに5,000ドルずつ増加することになります。また、年収額が45,000 ドル未満の従業員と勧誘禁止合意を結ぶことも禁じられ、この年収額は、2037年まで5年ごとに2,500ドルずつ増加することになります。上記年収額は、給与額、ボーナス、手数料、チップまたは従業員の401(k)や403(b)プラン、フレキシブル支出口座(flexible spending accounts)、医療貯蓄口座および通勤経費貯蓄口座などの課税繰延選択拠出額(elective deferrals)、並びに、従業員のForm W-2に反映される他の課税対象給与を含む、従業員の年間収入額に基づきます。さらに、改正IFWAの下では、競業避止合意または勧誘禁止合意には相当な約因によりサポートされていなければなりません。すなわち、(i) 従業員がかかる契約を締結してから、同雇用主の下で2年以上勤務していること、あるいは、(ii) 雇用主が、一定の雇用期間と職業上もしくは経済的な利益の組合せ、またはそれだけで相当な約因となるに足る職業上もしくは経済的な利益を含む、他の相当な対価を提供したことが要求されます。他に注目すべき点として、改正IFWAは秘密保持条項および職務発明条項に関する制限を定めていないため、雇用主は、前述の年収額要件を満たさない従業員に対しても、強制執行可能な機密保持および職務発明譲渡に関する合意の締結を要求することができます。

改正IFWA上、イリノイ州の雇用主は、従業員に(i)競業避止合意または勧誘禁止合意をレビューする期間として、14日以上(新規雇用の場合は、勤務開始の14日以上前)の期間を与え(ただし、従業員には同期間について権利放棄の選択肢がある)、(ii) 合意締結に先立ち、従業員に対し、弁護士に相談するよう書面で助言する必要があります。

イリノイ州に所在するまたは従業員を有する雇用主は、本改正を遵守するために、2022年1月1日よりも相当期間前から、定型書式に含まれる競業避止および勧誘禁止に関する条項のレビューを行うことが推奨されます。スタンドアローンの競業避止契約書または勧誘禁止契約書だけではなく、採用内定通知(offer letters)、雇用契約書その他の競業避止および勧誘禁止に関する条項を含む契約書も見直しておくべきです。雇用主が改正IFWAの遵守を怠った場合、イリノイ州司法長官が、(同雇用主は)改正IFWAに違反して合意を使用するパターンまたは慣行に陥っていると信じるに足る相当な理由があれば、同長官による調査またはエンフォースメント・アクションの対象となる可能性があります。そのような場合、雇用主に対して、損害賠償義務および衡平法上の救済に加え、違反1件につき最高5,000ドル、または5年以内に違反が繰り返された場合は最高10,000ドルの民事罰を科される可能性があります。さらに、改正IFWA上、かかる合意のエンフォースメントに関する訴訟において勝訴した従業員は、敗訴者である雇用主から合理的な弁護士報酬および費用を全額回収する権利を有します。

© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。