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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

言語の壁があるとき、企業は予期せぬ訴訟を回避するために努力しなければならない

4.4.24

最近のニューヨークのある裁判は、ビジネスミーティングや電話会議をインクルーシブな(誰も排除しない)ものにし、特定の言語への理解度によって特定の参加者が排除されることがないよう企業が配慮することの必要性を強調しています。

2024年3月13日、ニューヨークの連邦地方裁判所の裁判官は、みずほ銀行の元従業員による、合衆国法典第42編1981条に基づく請求を棄却しました。11の訴因を含む第一次修正訴状(First Amended Complaint、以下「FAC」といいます。)の中で、元従業員は、連邦、ニューヨーク州及びニューヨーク市の様々な法律に基づき、日本人の上司たちが、人種、国籍、性別、家柄または障害を理由に元従業員に対する差別を行ったと主張しました。

元従業員は、会社の重要な事項に関する協議は、たとえ日本語を話さない者が同席しているときでも全て日本語のみで行われ、元従業員が、日本語を話せない者を排除するやり方に抗議し、銀行側に対して英語で会議を行ってほしいと繰り返し求めたにもかかわらず、被告であるみずほ銀行は、ビジネスミーティングや電話会議の間中、日本語で話し続けた、と主張しました。元従業員は、日本人の従業員たちは、元従業員の業務に関する事項について協議していたので、彼らが何を話していたのか知る必要があったと述べました。

元従業員が自身の主張を立証するためには次のことを示さなければなりません― (1) 元従業員が保護される行為(Protected Activity)に該当する行為を行ったこと、(2) 銀行側がその行為を知っていたこと、(3) 元従業員が不利益な雇用上の対応を受けたこと、(4) 当該Protected Activityと当該不利益な雇用上の対応との間に因果関係があること、です。判決文の意見と命令(Opinion and Order)の項の中で、裁判官は、「職場での日本語の使用を禁止しないというみずほ銀行の判断は人種に基づく差別に該当しないということを考慮すると、元従業員がFACの中で主張する、日本語で協議される会議から日本語を話さない従業員を排除することに対して抗議したという行為はProtected Activityに該当しない」というみずほ銀行側の主張に同意しました。元従業員は、みずほ銀行の従業員たちに日本語を話すことを認めることは、事実上、その協議から日本人以外の従業員を排除することになると主張しましたが、裁判官は、みずほ銀行が行った区別は、英語話者と非英語話者のような言語に基づく区別であり、人種、宗教及び国籍に基づく区別ではない、と判断しました。要するに、裁判官は、みずほ銀行による区別はその人物が日本語を知っているかどうかに基づくものであったと判断し、元従業員は日本語を学習することを選択することもできたと指摘したうえで、みずほ銀行は同社の従業員に対して特定の言語の使用を強制する必要はなかった、と判示したものです。

ミーティングや電話会議に日本語を話さない者が同席する際に、日本語(あるいはその他の英語以外の言語)を使用することは許容されますが、企業は、ビジネスミーティングや電話会議がインクルーシブで、言語によって誰かを排除するものにならないように様々な選択肢を検討すべきです。生産的かつ信頼の文化に根差したビジネスミーティングや電話会議を確実なものにするために、企業は、英語以外の言語で協議が行われる場合には、定期的に協議を一時停止して要点を要約したり、その言語を話す人と話さない人とを交互に座らせたり、通訳サービスを利用したり、あるいは、協議の要点や重要な判断について十分な説明がなされ、出席者全員がそれを理解していることを確かにするために、英語とそれ以外の言語とで、協議の内容を要約することを検討する余地があります。

増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
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