企業にとって、州外法人事業登録(Foreign Qualification)の要否の判断は常に厄介な問題です。企業が、ある州において事業活動を行う際には、当該州において州外法人事業登録が必要となりますが、各州は、州外法人事業登録の要否について明快で簡潔な規則を設けておらず、その代わりに、当該企業が、その州において、定期的な、組織的な、または広範な事業活動を行っているか否かに着目し、あるいは、どのような活動であればその州において事業活動を行っているとはみなされないか、を定めています。
リモートワーカーの存在は、州外法人事業登録の要否の分析に新たな要素を加えました。新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックにより、企業は一時的にオフィスを閉鎖せざるを得ず、また、従業員はリモートワークを余儀なくされ、それにより企業経営者と従業員の意識も変化しました。リモートワークの技術によって、企業はオフィスの維持費用を節約し、また、多くの従業員が在宅勤務のメリットを享受しています。それが完全なリモートワークか、リモートワークと出社を組み合わせたハイブリット勤務であるかにかかわらず、企業は、今、従業員がリモートワークを行う際に、その州において州外法人事業登録をする必要があるかどうかを判断しなければなりません。
州外法人事業登録の要否を判断するための最初のステップは、各州の法令を調べること、特に、どのような行為であれば、その州において事業活動を行っているとみなされずに済むのか、を調査することです。通常、他州から出荷される製品の注文を勧誘するだけ、または、その州内での給与の支払いや営業活動が限定的である場合などは、その州で事業活動を行っているとはみなされません。
次のステップは、どのような行為が、その州内で事業活動を行っているとみなされる事業活動に該当するのかを調べることです。その行為は独立した事業活動に当たるでしょうか?その州に居住しているリモートワーカーの人数は?その州に居住している従業員から得られる収益の割合は?
最後のステップは、個々の判例を調べることです。多くの法律は解釈の余地を残しているため、どのような行為が州外法人事業登録を要する事業活動に当たるかを実際に判断しているのは裁判所であり、その判断は州によって異なることが多いのです。
他州での州外法人事業登録の要否について疑問がある場合には、弁護士に相談し、その判断を確認することが重要です。リモートワーカーが増加の一途をたどる今、企業にとって、州外法人事業登録を怠ったがためにペナルティを受けることがないように注意することが不可欠です。
増田・舟井法律事務所は、米国でビジネスを展開する日本企業の代理を主な業務とする総合法律事務所です。
当事務所は、シカゴ、デトロイト、ロサンゼルス、およびシャンバーグに拠点を有しています。
© 2024 Masuda, Funai, Eifert & Mitchell, Ltd. All rights reserved. 本書は、特定の事実や状況に関する法務アドバイスまたは法的見解に代わるものではありません。本書に含まれる内容は、情報の提供を目的としたものです。かかる情報を利用なさる場合は、弁護士にご相談の上、アドバイスに従ってください。本書は、広告物とみなされることもあります。