ほとんどの先進国には、児童労働を規制する法律があります。多くの企業では、児童労働の禁止だけでなく、人権を尊重する義務に言及する行動規範を定めています。
米国では、労働省(「DOL」)が管轄する公正労働基準法(Fair Labor Standards Act)(以下「FLSA」といいます)が、児童労働に関する最低賃金、時間外労働および労働時間の記録管理の要件などの様々な規制について定めています。さらに、FLSAとは別に、米国全50州が、児童労働に対して州ごとに異なる、またはより厳しい要件を課す児童労働法を実施しています。
2023年度にDOLは、全国で5,792人の児童に関わる955件の事件を調査しましたが、その数は、2022年度と比較して14%増加しました。また、2023年度、DOLは800万ドル以上の民事制裁金を科しましたが、この金額は2022年度に科された制裁金額の83%に相当するものです。
2024年3月、労働省訟務事務局は、テネシー州モリスタウンにある屋外用電力機器部品の製造業者に対し、違法な児童による就労を停止し、以後、連邦児童労働法に従うよう求める連邦裁判所による同意裁定を得たと発表しました。DOLは、調査を通じて、同製造業者が10人の児童を過酷な労働環境にさらし、18歳未満の者による操作が禁止されている電動式吊り上げ機を操作している児童を実際に視認したことを明らかにしました。DOLは、未成年者がかかる機械を操作しているのを確認した後、その施設からの物品の出荷を停止させました。この同意裁定により、同製造業者には、29万6951ドルの民事制裁金を支払うこと、児童労働に関連する30日分の収益の没収として150万ドルを積み立てること、匿名通報窓口を設置すること、3年間にわたって同施設の抜き打ち調査を受け入れることが義務付けられました。
企業は、児童の年齢に応じて許可される職務と児童が就労できない危険な職務を判断するために、規則とガイダンスを見直す必要があります。一般的に、14歳未満の児童は、新聞配達、臨時のベビーシッター、映画・テレビ・ラジオ・劇場などでの俳優やパフォーマー、または、児童の両親が完全に所有する事業における仕事(ただし、鉱業、製造業、危険な職場を除く。)以外で働くことは認められていません。14歳から15歳の未成年者は、限られた時間であれば就学時間外に働くことができますが、それは製造業および危険な業種以外の仕事に限られます。たとえば、14歳から15歳の未成年者は、運送、建設、倉庫、通信および公共事業に関連するほとんどの職務に就くことができません。このような児童による就労が禁止される職務には、吊り上げ機や工具を用いる作業、はしご、足場または類似の設備を必要とする作業が含まれます。16歳から17歳の未成年者の労働時間に制限はありませんが、炭鉱業、森林消火、森林火災予防、木材置場・森林管理、伐採および製材業のほとんどの職務に就くことはできません。さらに、16歳から17歳の未成年者は、動力駆動の木工機械、ほとんどのフォークリフトのような動力駆動の吊り上げ装置、および動力駆動の金属成形機械、穴あけ機械およびせん断機を操作することはできません。
DOLは、トレーニング教材を提供して、雇用主が留意すべきベストプラクティスを示しています。これらのベストプラクティスには、児童労働の要件に関するスーパーバイザーやマネージャーに対するトレーニング、従業員に対する児童労働に関する資料・情報の提供、従業員が児童労働の違反を発見した場合に匿名で通報できるようにするための社内電話番号の設置、危険な機器には18歳未満の者による操作が禁じられていることを全従業員に知らせる「操作禁止」ステッカーの貼付などが含まれます。
児童労働に対するDOLの罰則は厳しいものになる可能性があります。貴社のコンプライアンスを徹底させるため、米国もしくは特定の州の児童労働規制法についてご質問がある場合は、フランク・デルバルト弁護士(Frank J. Del Barto) または雇用/労働法/福利厚生部門のメンバーまでお問い合わせください。
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