2024年1月1日に施行された連邦法である企業透明性法(Corporate Transparency Act、以下「CTA」といいます。)は、企業の所有者に関する透明性を高めることで違法な金融活動を防止することを目的としています。CTAは、特定の企業に対し、企業の「実質的所有者」に関する情報(以下「実質的所有者情報」といいます。)を、米国財務省の金融犯罪取締ネットワーク(以下「FinCEN」といいます。)に提出することを義務付けています。 直接的もしくは間接的に企業の25%以上を所有ないし支配する個人、または直接的もしくは間接的に企業に対して実質的支配力を行使する個人が、「実質的所有者」に該当します。
2024年12月以降、テキサス州東部地区連邦地方裁判所、第5巡回区連邦控訴裁判所(以下「第5巡回区控訴裁判所」といいます。)、および米国連邦最高裁判所による複数の判決により、CTAの報告義務は大幅に変更され、報告義務を停止するアメリカ全土に効力が及ぶ仮差止命令が有効となっていました。しかしながら、2025年2月18日にテキサス州東部地区連邦地方裁判所はこの仮差止命令の効力を停止しました。FinCENはその後、実質的所有者情報に関する報告書(以下「実質的所有者報告書」といいます。)の提出期限を、2025年3月21日までに延長することを公表し、CTAの報告義務を負うすべての企業に対し、初回の実質的所有者報告書(既に提出している場合で更新・訂正の必要がある場合には更新・訂正された報告書)を、当該期限までに提出するよう求めました。FinCENは、一部の企業がCTAの報告義務を遵守するために追加の時間が必要となる点を認識しており、上記の期限が近付いた際に、追加のガイダンスを公表する予定であると述べています。
米国連邦議会は、上記の期限が中小企業にとって過度な負担となる可能性があることも認識しています。2025年2月10日、下院は報告期限を2026年1月1日まで延長する「過度な事務作業から中小企業を保護する法律」(Protect Small Businesses from Excessive Paperwork Act)を可決しました。 なお、上院では採決に至っていません。
貴社にとっての意味
CTAの報告義務を負う企業はすべて、初回の実質的所有者報告書(既に提出している場合で更新・訂正の必要がある場合には更新・訂正された報告書)を、2025年3月21日までに提出しなければなりません。
ネクストステップ
CTAの合憲性に関する口頭弁論が、2025年4月1日に第5巡回区控訴裁判所の大法廷で行われる予定であり、また連邦議会により報告期限を延長する新たな法律が制定される可能性もありますが、CTAの報告義務を負うすべての企業は、2025年3月21日までに実質的所有者報告書を作成し、提出する必要があります。 増田・舟井法律事務所は、引き続きCTAの動向を注視し、変更があればお知らせいたします。
お問い合わせ
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(コーポレート・ファイナンス・M&A部門)
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