つい最近、当事務所にある男性から電話がありました。男性は、「スーツケースに入れたカレーのルーを通関手続きで申告しなかったために、グローバル・エントリー・プログラムによる特典が取り消されてしまった」と不満を訴えました。グローバル・エントリー・プログラムは、米国税関・国境警備局(「CBP」)が実施するプログラムで、事前に承認を得ることで低リスクとみなされる渡航者は、米国到着時の通関手続きを迅速に済ませることができます。
ご存じの通り、渡航者は、入国手続きの一環として税関申告書に記入しなければなりません。しかし、この男性は、カレーのルーを持っていることを忘れてしまい、申告書に記入していませんでした。そのために300ドルの罰金を科されたばかりか、数日後にはさらにグローバル・エントリー・プログラムによる特典の剥奪を知らせる通知を受け取ることになったのです。ちなみに、グローバル・エントリー・プログラムの条件および条項に違反した場合、会員資格が失効する可能性があります。この男性の場合、「大好物のカレー(ルー)」の所持が、関税および農産物規則の違反とみなされ、会員資格を喪失してしまったわけです。
エクアドル産のアボカド、日本のスナック菓子、カレー・ルーなど、CBPが輸入規制対象となる農産物の未申告を発見した場合、渡航者は多額の罰金を支払うことになります。それでは、海外で美味しいものを見つけた渡航者はどうすればよいのでしょうか?米国に入国するすべての渡航者は、肉、果物、野菜、植物、種子、土、動物および植物性・動物性製品(スープやスープ製品を含む)を所持していることを申告しなければなりません。預け荷物や機内持ち込み手荷物に入れるもの、または車内に持ち込むものすべてが申告の対象となります。
申告が必要か否か定かでないときは、とにかく申告することをお勧めします。規制対象品目について申告すべきか確かではなかったために申告せず、それをCBP審査官に発見されてしまうのは、最悪のシナリオと言えるでしょう。未申告の規制対象品目は、没収され、廃棄されます。その上、規制対象の農産物を申告しなかった場合、民事上の罰金が科されることがあります。それが初めての違反である場合、罰金の上限は1,000ドルとなりますが、未申告の品物が商用目的とみなされた場合には、より高額の罰金を科されることになります。
次の入国審査で、CBP審査官に「カレーのルーまたは他の食品を所持していますか?」と尋ねられた際には、よく考えてから答えるようにしましょう。ただのカレーが極めて高価な海外土産となってしまわないように。
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