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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

2020年米国ベンチャーキャピタル業界にロックダウンはなかった?

6.10.21

新型コロナウイルスによるパンデミックが2020年の世界経済にもたらした大混乱は、国際通貨基金が「大恐慌以来の最悪の不況」と称した景気後退を引き起こしました。しかし、米国のベンチャーキャピタル業界では、そのような影響は皆無だったようです。グローバル社会が様々な経済的・社会的復興に取り組む中、米国のベンチャー・エコシステムは、驚異的な回復力を発揮し、ベンチャーキャピタル業界の過去最高記録を更新しながら、2020年を記録的な年としたのです。

全米ベンチャーキャピタル協会(National Venture Capital Association)(「NVCA」)によると、米国のスタートアップ企業は、グローバル・ベンチャーキャピタルの51%を占める資金を調達し、440万人以上の従業員を雇用しているとされています。米国における2020年のベンチャーキャピタル出資総額は1,640億ドルに達し、世界のベンチャーキャピタル出資総額である3,210億ドルの半分以上を占めるに至りました。また、米国におけるベンチャーキャピタル・ファンド全体の中央値は、2019年から69%増の7,500万ドルでした。

最近発行されたNVCA2021イヤーブック上の他のデータでは、製薬およびバイオテクノロジー産業における好調な結果が示されています。具体的には、ライフサイエンス企業に対する出資額は360億ドル(2018年の前年対比41%増)でした。さらに、2019年に88億ドルであった創薬企業への出資額は、2020年には162億ドルへとほぼ倍増しています。このような傾向の背景には、ワクチン、抗ウイルス剤および新型コロナ感染症対策を取り扱う企業に対する投資家の関心が再び高まったことだけでなく、製薬・バイオテクノロジー産業の成熟化が進んだことがあると思われます。NVCAが「ベンチャーキャピタルの支援を得たこの分野のスタートアップ企業の多くが、2020年に相当の資源とエネルギーを新型コロナウイルス対策に注ぎ込んだ」と指摘しているように、モデルナ社(Moderna Inc.)はその一例といえます。

2020年における記録的結果からもお分かりの通り、米国は前代未聞の様々な難題を突き付けられたにもかかわらず、「活気に満ちた起業家精神、成功という経済的認識、優れた科学の利用、人材開発、公平かつ開かれた資本市場」を維持してきたのです。ベンチャーキャピタルの成功が、「科学研究への投資、意欲的な起業家、知的財産の保護、熟練した労働力、および新たな企業形成を支援する公共政策」に左右される中、これらすべてが米国におけるベンチャーキャピタル業界の目覚ましい成長に大きく貢献したといえるでしょう。ここで気になるのは、「2021年は?」ということではないかと思いますが、2021年にベンチャーキャピタルの成長が後退する兆しは見られません。事実、Pitchbook-NVCA Venture Monitor(2021年度第1四半期)に収集されたデータは、取引決定(dealmaking)、エグジット(exit)および資金調達活動において過去最高記録が更新されたことを示しています。

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