デラウェア州法人のオフィサーが会社に対して負う義務(その義務は米国外にいるオフィサーにとっては時に果たすことが困難であり得る)について言及した最近のデラウェア州の判例は、かかる義務についての重要な注意喚起をデラウェア州法人である米国子会社のオフィサーに与えてくれます。
デラウェア州裁判所は、最近、デラウェア州法人のオフィサーが会社に対して監督義務を負うと判示し、オフィサーが負う監督義務の範囲を明確化しました。デラウェア州裁判所は、従来より、取締役会が会社に対して監督義務を負うことを認めており、その監督義務には、情報の正確性や報告システムの適切性を保証するために誠実に努力することが含まれていました。しかし、デラウェア州会社法下で、どの程度オフィサーが会社に対してそのような監督義務を負うこととされているのかは明らかではありませんでした。オフィサーの監督責任に関する立場を明確にしている最近の判例は、デラウェア州法人のオフィサーの監督義務の指針となるものです。
デラウェア州裁判所は、ある企業の株主が、その企業のオフィサーに対して、オフィサーは善管注意義務として会社の監督義務を負っており、オフィサーは、社内のセクハラや不正行為のレッドフラッグを意識的に無視したことにより当該義務に違反をしたと主張して争ったケースにおいて、オフィサーの監督義務について言及しました。同裁判所の意見についての重要な点は、以下の3点に集約されます。
(1) まず、デラウェア州裁判所は、オフィサーが取締役と同様に監督義務を負うとしたものの、取締役会が包括的な監督義務を負うのとは対照的に、オフィサーの監督義務の範囲はオフィサーの責任範囲内に限定されるものとしています。例えば、マーケティング最高責任者は、主にマーケティング分野を監督することが期待されます。これに対して、CEOは、取締役会と同様に、会社全体を監督することが期待されます。(2) ただし、同裁判所は、オフィサーが「十分に目立つ」レッドフラッグに気づいた場合、たとえそれが自分の責任範囲外であっても取締役会に報告する責任があると指摘しています。(3) さらに、同裁判所は、情報システム構築のための誠実な努力を意識的に行わなかったり、レッドフラッグを意識的に無視したりするなど、監視責任に違反したオフィサーの悪意を原告が証明できた場合にのみ、オフィサーは責任を負うとしました。
このデラウェア州裁判所の意見に従い、デラウェア州の会社のオフィサーは、自分の責任範囲内で職務を遂行するために必要な情報を得るための情報システムの構築や、気付いたレッドフラッグを取締役会やCEOなどの上位のオフィサーに報告するために誠実に努力すべきことを認識しなければなりません。オフィサーが外国に在住しており、日常業務を監督することができない場合には、現地で日常業務を行う者を選任し、レッドフラッグを発見したら報告させる必要があります。また、通常の報告制度では発見しにくい問題を発見するために、内部通報制度を設けることを検討してもよいでしょう。オフィサーが自分の担当領域内外でレッドフラッグの問題を発見した場合には、オフィサーは、取締役会および/または上位のオフィサーに報告するかどうかを検討する必要があります。
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