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ニュース&イベント: クライアント・アドバイザリー

追加特急申請でギリギリセーフ?渡航日程が迫っているのに届かない米国パスポート

9.28.23
関連業務分野 移民法

現在、米国国務省(DOS: U.S. Department of State)には、異例な数の米国パスポートの発給申請が殺到しています。今年に入ってから、1か月間のパスポート申請数が500,000件以上に上った月もあり、DOSは2023年の申請数は過去の記録を大きく上回る最高値になると予想しています。この申請者数の急増により、現在米国パスポートの発給申請および発給手続きに大幅な遅れが生じています。遅延の日数によっては、渡航計画の見直しまたはキャンセルの必要が生じる場合もあり、その結果、高額な航空料金もしくは航空券のキャンセル料金の負担または旅程の変更をせざるを得なくなってしまったケースが相次いでいます。

コロナ禍では国外旅行の需要も米国パスポートの発給数も少なかったため、DOSは他の政府機関と同様に申請作業を担当する人員を削減していました。申請数の急増と手続きの大幅な遅れを受け、急ぎ職員の数を増やしサテライトオフィスを設置するなどの対応を始めましたが、いまだに追いついていないのが現状です。

DOSが年間を通じた需要の変化に応じて申請の所要時間は変動すると公表しているように、実際の所要時間は、過去数か月間に何度も変動しています。2023年3月24日以降から9月現在まで申請されたパスポート発給手続きには、通常申請で10週間から13週間、特急申請(Expedited Application)で7週間から9週間要しています。申請処理は、DOSがパスポート申請機関またはパスポートセンターで申請書類を受け付けた時点から開始されたとみなされるため、上記の所要時間にパスポートの郵送時間は含まれません。申請者が申請書類を郵送し、その申請書類が旅券事務所(Passport Office)に届くまでに最長2週間、そしてパスポートが発給された後に申請者の手元に届くまでに最長2週間かかることもあるため、郵便の速達サービス(下記参照)を利用する申請者も少なくありません。

手続きが迅速に行われるように、一般的に以下のような対応策を講じることができます。

  • 通常申請料金に加え60ドルを支払い、特急申請する。
  • 米国旅券事務所には、Priority Mail Expressで申請書類を送付する。
  • 新規申請の場合はDOSでの申請時に追加料金として19.53ドル支払い、発行されたパスポートを1日~2日の速達で郵送するように申請する。

なお、パスポート申請書類とともに提出した関連書類(出生証明書、前のパスポート等)は、パスポートとは別途遅れて申請者に返送されます。よって、数週間程たっても関連書類が届かない場合のみ、旅券事務所等に問い合わせることをお勧めいたします。パスポート更新申請の場合は、1日~2日の速達サービス申請はできず、First Class Mailで返送されます。

それでは、緊急時に最短期間でパスポートを取得する方法はどういったものになるのか。まず、緊急事態の性質とどの程度早く渡航する必要があるかが1つ目の判断基準となります。DOSは、至急パスポートが必要な状況を、主に「早急性のある渡航」(Urgent Travel)と「緊急性のある渡航」(Emergency Travel)の2種類に区別しています。両種ともに厳しい審査基準があるため、これらの申請をしても渡航予定日ギリギリまでパスポートが届かず気をもむことになる場合が多いようです。

「早急性のある渡航」(Urgent Travel)は、出張、家族の結婚式等「緊急性のない渡航」(Non-emergency Travel)を理由として、特急申請(7週間~9週間の処理時間を要する)よりも短期間で渡航する必要がある申請者向けの手続きです。14日以内に急用で国外に行く必要がある場合、または28日以内に外国のビザを取得しなけばならない場合に限って、Urgent Travelの申請をすることができます。Urgent Travelの手続きを申請するためには、まずNational Passport Information Centerに電話で予約を取り、その後予約を取った事務所で直接手続きを進める必要があります。予約を取らずに、旅券事務所等に赴いても原則受け付けてもらえません。いざ予約するために電話しても、実際に担当者と話せるまで長い時間待たされるという状況が過去数か月に渡って続いているようです。やっとの思いで担当者とつながっても、他州など遠方の事務所でしか、すぐに予約は取れないと言い渡される場合もあり、Urgent Travelの手続きが非現実的かつ高額なものになってしまうケースも報告されています。米国旅券事務所もUrgent Travelの予約可能数には限りがあるため、いつでも予約を保証できるものではないと公表しているのが現状です。

「緊急性のある渡航」(Emergency Travel)は、外国に滞在中の近親者が死亡した場合、(ホスピスケア等)瀕死の状態にある場合、または命にかかわる傷病を負った場合の「外国にいる近親者の生死にかかわる状況」を理由とした渡航であると定義されています。緊急渡航サービスを申し込む際に「近親者」とみなされるのは、親、法定後見人、子供、配偶者、兄弟姉妹または祖父母に限られており、申請時には、かかる「外国にいる近親者の生死にかかわる状況」を示す証拠(国外にいる近親者の医師からの手紙等)を提示しなければなりません。なお、渡航予定日が2週間以内に迫っている場合のみ、National Passport Information Centerに電話をして予約を取り申請することができます。ただし原則として、予約日は、渡航日前の3営業日以内であることが求められます。予約日に事務所に行く際には、3日以内に渡航予定がある証拠(航空チケット等)も併せて提示する必要があります。

前述のような手続上の遅延を鑑みて、渡航日寸前の予定変更や渡航キャンセルを避けるためにも、渡航者は渡航予定日の数ヶ月前に余裕をもって米国パスポートを申請するか、または申請した米国パスポートを受け取るまでは渡航日程を確定させないことを現在強くお勧めしております。なお、パスポート発行と郵送後も、申請者が提出した関連書類(過去に発給されたパスポート等)がしばらくの長い間返送されない場合もあるため、頻繁に渡航する申請者は、この点にも留意して申請する必要があります。

加えて、申請件数の急増の影響により、TSA PreCheck(空港の事前審査)、Global Entry、NEXUS、SENTRIおよびFASTなどのTrusted Traveler Programの申請手続きの所要時間も伸びています。たとえば、米国国土安全保障省(DHS: United States Department of Homeland Security)は、以前は4週間~6週間で処理していたGlobal Entryの申請手続きに、現在は4か月~6か月を要していると公表しています。したがって、Trusted Traveler Programの申請も予定する場合にも、これらの所要時間も視野に入れて、早め早めに申請手続きを始めることをお勧めしております。

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