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「囮スキーム」を利用したTNビザ申請に対するクラスアクションの提起を受けて、TNビザの審査手続が厳格化

12.14.23
関連業務分野 移民法

TNビザの下で専門技術者として雇用する目的でメキシコ人労働者をおびきよせ、彼らが米国に到着するやいなや、技術職ではないライン工として低賃金で長時間働かせたとして、メキシコ人労働者たちが米国企業に対してジョージア州においてクラスアクションを提起しました。

本訴訟においては、大手自動車メーカーのサプライヤーである米国の自動車部品メーカーが、人材斡旋会社とともに、3年間にわたって、TNビザの下での労働者の採用およびビザ申請プロセスにおいて虚偽を述べ、メキシコ市民と米国政府を欺いたと主張されました。メキシコ人労働者たちは、彼らが米国に着くやいなや、雇用主から、生産業務に就かされること、そして、同じ生産ラインで作業を行っているアメリカ人労働者に支払われている時間給よりもはるかに低い給料で長時間労働をしなければならないことを知らされました。

仮に当該部品サプライヤーおよび人材斡旋会社に対する主張が真実であるならば、両社は、メキシコから専門技術者であるエンジニアを勧誘したにもかかわらず、当該労働者を米国の非専門的職務に配置したことで、TNビザ・カテゴリーの規則に違反したことになります。なお、2023年10月、本事件の当事者間で暫定的な和解が成立しました。しかしながら、本件のようなクラスアクションが提起されたことにより、在メキシコ米国大使・領事に対して提出されたTNビザ申請の審査がより厳しくなりました。実際に、企業からは、(これまでも常に厳しい審査が行われてきたカテゴリーではあるものの)科学技術者(scientific technician/technologist)の職種カテゴリーにおけるTNビザ申請が却下される事例が報告されるようになってきています。

米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)によって、米国・カナダ・メキシコ間に特別な経済・貿易関係が築かれました。USMCAは、1994年に導入された北米自由貿易協定(NAFTA)に代わるものです。カナダ市民およびメキシコ市民は、USMCAに基づき、TNビザを取得すれば、あらかじめ定められた基準に従い、特定の専門職レベルの職種に就き、米国の雇用主の下で働くことが認められています。USMCAは、TNビザ申請の対象となる職種および各職種に必要な最低要件を定めています。限られた例外はありますが、TNビザ申請の対象となるほとんどすべての職種において、学士号を保持していることが最低要件とされています。

TNビザ申請資格のある専門職には、エンジニア・技術者、会計士、弁護士、エコノミストなどが含まれます。TNビザの取得を望むメキシコ人労働者は、入国前にTNビザを申請し、取得する必要がありますが、カナダ人労働者は米国への入国時にTNビザによる入国許可を申請することで足ります。TNビザ申請者は、米国で従事する予定である職務が、USMCAにおいて規定された専門的職務であることが明記された雇用証明書を提出しなければなりません。また、かかる雇用証明書には、職務内容、米国滞在予定期間、報酬支払の取り決めに関する詳細な記述も含まれていなければなりません。

他のビザ・カテゴリーとは異なり、TNビザ・カテゴリーの申請には米国移民帰化局(USCIS)の事前承認を必要としません。TNカテゴリーが米国の雇用主にとって特に魅力的な理由は、H-1Bビザとは異なり、ビザの発給上限枠がなく、外国人労働者がTNビザによる雇用のオファーを受け入れれば、労働者はTNビザを取得して比較的早く職務に着手できるということです。在メキシコ米国大使・領事とあらかじめ予約を取り、ビザ申請手続きを済ませることができれば、メキシコ市民は、TNビザの取得後すぐに働き始めることができます。カナダ市民は、適切な書類を揃えていれば、入国港でTNビザの申請を行うことができます。

米国の雇用主が、TNビザ労働者を、TNビザの取得時に計画されていた専門的職務とは異なる業務に従事させることは厳しく制限されています。具体的には、米国の雇用主は、TNビザ労働者が米国で実際に担当する業務が組立、生産またはその他の非専門的作業や職務であるにもかかわらず、同労働者の雇用証明書を作成する際、エンジニアとして雇用する旨を記載することはできません。

本訴訟およびTNビザに関する追加情報は、将来発行されるビジネス移民法ニュースをご覧ください。

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